[ コンセプト 研究内容 研究テーマと担当者 ]

コンセプト(ごあいさつ)

プラズマに関する研究は,かつては核融合への応用を主軸に進められてきましたが,現在は,材料プロセッシングなどの工業分野でプラズマを活用するための研究が活発になっています。プラズマプロセシングと総称されるこの学術・技術は,エレクトロニクスのみならず,機械工業,環境技術,および,医療技術にまでをカバーする学際的で多様な分野に成長し,我が国のものづくりを根底から支えています。しかし,プラズマを工業的に利用している企業の方と話してみると,「プラズマはわけがわかりません」,「プラズマを制御できません」,「ごまかしながら何とか使っています」という声が聞こえてきます。プラズマは,先端工業の担い手としてはまだまだ劣等生の域を出ていないようです。当研究室では,プラズマを先端工業分野の優等生に押し上げることを目標に研究を行なっています。我が国の産業構造が急速に変化を遂げつつある今日,広い視野をもって,プラズマの応用範囲を拡大する活動を推進します。


研究内容

最近の研究について紹介します。(随時更新)
過去の研究内容の紹介はこちら


レーザー応用プラズマ計測技術

レーザーを使ってプラズマの内部を丸見えにする

プラズマは魅惑的に光りますが,外からプラズマを眺めているだけではプラズマの内部を知ることはできません。当研究室では,プラズマにレーザー光を打ち込み,プラズマの内部状態を調べる方法を開発しています。プラズマ中に存在する原子・分子・電子・微粒子などはレーザー光を吸収したり散乱したりします。また,プラズマ中に存在する原子や分子は真空中にある原子や分子とは異なるエネルギー準位構造を持ちます。これらを調べれば,他の方法では知ることのできないプラズマ内部の様々な量を知ることができます。他の研究者が測定できない量を測定できることは,科学の競争において圧倒的な有利であり,そのおかげで当研究室は世界に名の知られた研究グループになっています。

  • レーザー誘起蛍光法  Laser-Induced Fluorescence (LIF)


    関連論文
    Efficient production and transport of OH radicals in spatial afterglow of atmospheric-pressure DC glow discharge using intersecting helium flows
    N. Shirai, H. Owada and K. Sasaki,
    Plasma Sources Sci. Technol. 30 125012 (2021) LINK

  • レーザー脱水和による水和電子の検出

    Detection of solvated electrons below interface between atmospheric-pressure plasma and water by laser-induced desolvation Y. Inagaki and K. Sasaki Plasma Sources. Sci. Technol. 31 03LT02 (2022)
    LINK
  • レーザー光脱離による負イオンの測定

    関連論文
    Negative ion species in atmospheric-pressure helium dc glow discharge produced in ambient air
    K. Sasaki, R. Hosoda and N. Shirai
    Plasma Sources Sci. Technol. 29, 085012 (2020)
    LINK

大気圧プラズマ装置の開発

従来にはない様々なプラズマ源を開発する

真空装置を必要としない大気圧プラズマ源は様々な応用の可能性があります。希ガスを利用しない大気圧プラズマジェットの開発において少量の酸素ガスによりオーロラ発光(原子状酸素の1D−1S禁制遷移:波長 557.73nm)を伴う緑色のプラズマを観測することに成功しました。

関連論文
Observation of 1D - 1S forbidden optical emission of atomic oxygen in atmospheric-pressure N2/O2 plasma jet
K. Sasaki, S. Nishiyama and N. Shirai
Contrib. Plasma Phys. e202000061 (2020)
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プラズマ環境技術

プラズマを利用したアンモニア合成

アンモニアは植物への窒素固定だけでなく近年エネルギーキャリアとしての利用も検討される
重要な物質であり、大規模設備であるハーバーボッシュ法により合成されてきましたが、中規模・小規模レベルの合成のためのプラズマ装置の開発を行っています。


関連論文
Catalyst-free synthesis of ammonia using dc-driven atmospheric-pressure plasma in contact with water
M Ramoy, N Shirai and K Sasaki
J. Phys. D: Appl. Phys. 57, 01LT01 (2024)
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関連論文
Contribution of vibrational excited molecular nitrogen to ammonia synthesis using an atmospheric-pressure plasma jet
A. Miyake, N. Shira, K. Sasaki
J. Appl. Phys. 135, 213301 (2024)
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プラズマ・液体相互作用

プラズマが直面する全く新しい研究課題

プラズマと液体の相互作用の研究が注目されていますが、従来大気圧でしか扱えない水を真空中に水ジェットとして導入することで低気圧プラズマと水の相互作用を調べることが可能になりました。これまでにガスの発生や水和電子の検出を明らかにしています。


関連論文
Detection of hydrated electrons in water-jet immersed in low-pressure plasma by laser-induced desolvation
Y. Inagaki and K. Sasaki
Plasma Source Sci. Technol. 32 065019 (2023)
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関連論文
Observation of currentless redox reactions on surface of water jet immersed in low-pressure plasma
T. Ito, T. Sakka and K. Sasaki
Plasma Sources. Sci. Technol. 31 06LT02 (2022)
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プラズマナノテクノロジー

プラズマでしかできないナノ粒子プロセスを構築

容量結合型プラズマ(CCP)中に保持されたスズナノドロップレットの周囲にアモルファスカーボン膜を堆積させることで、コアシェルナノ粒子の合成に成功しました。合成されたコアシェル粒子は潜熱蓄熱材への応用に利用可能です。


関連論文
Synthesis of core–shell nanoparticles with liquid core using magnetron sputtering and capacitively coupled dusty plasmas
M. Murugesh and K. Sasak,
Jpn J. Appl. Phys. 63, 056003 (2024)
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プラズマによる新現象の開拓

プラズマ発光の自己組織化メカニズムを解明する

ある条件下で直流放電プラズマを生成すると陽極表面の発光が、模様を形成する自己組織化現象が観測されます。従来は水電極を用いた大気圧プラズマでのみ観測される現象と考えられてきましたが、金属電極を用いた場合、さらに低圧プラズマでも様々な発光パターンが観測されることを確認し、メカニズムの解明を進めています。

関連論文
Correlation between temperature distribution and changes in self-organized luminous pattern in an atmospheric pressure DC glow discharge with sheath gas flow
T. Miyazaki, K. Sasaki and N. Shirai
Plasma Sources Sci. Techol. 33, 115007 (2024)
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共同研究の推進
民間企業,公的機関を問わず,共同研究を推進したいと考えています。これまでに多数の民間企業との共同研究および核融合科学研究所との共同研究を行っています。今後は,特に民間企業との大規模な共同研究を推進したいと考えています。お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

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